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ハイレゾとエルカセット

ここ数年、目にしたり耳にしたりする機会の多い「ハイレゾ」なる言葉。

その定義はカタログや雑誌などに詳しく載っているのでここに改めて書きませんが、
現時点での印象はどうも「笛吹けど踊らず」で、
宣伝されているわりには浸透する気配が無い…と感じてしまいます。

私も、ハイレゾ対応と謳われている機材は全く持ち合わせていません。
唯一、ソニーのウォークマンNW-A16には関心があるのですが、
それはハイレゾ対応だからではなく、マイクロSDカードで容量を増やせるのが
最大の関心事なだけで(^^;)

CDが登場してからつい最近まで「デジタル対応」とのコピーが、
オーディオ機器だと何にでも付いていましたよね。
その「デジタル」が「ハイレゾ」に変わっただけで、
本質は何も変わってない気がするんです。

私自身は、オーディオに関してはハードにも大いに興味があるので、
これまでのCDとハイレゾを比較して、
規格的・性能的にどう勝っているかは理解できます。

しかし、それを一般の人が望んでいるか?
と考えると、それは必ずしもYesではないと思うんですね。

むしろ「ハイレゾで聴くならそれに対応した機器とソフトが必要」と言う事で、
「そんなの必要ない」と敬遠されているのでは、とさえ映ります。

製品を開発している方々に対しては大変失礼かと思いますが、
ハイレゾのような性能向上技術は、もうやる事がなくて仕方なく、
必要とは言えないとわかっているけど手を着けた…のが実際のところではないでしょうか。

そんなハイレゾを傍観していると、オーディオ全盛期を通過した方ならきっとご存知と思いますが、
私はエルカセットやDAT(Digital Audio Tape recorder)の顛末を思い出します。

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エルカセットは、カセットテープ(正しくは「コンパクトカセット」)の性能的な限界を破ろうと、
日本で開発され1976年頃から市販され始めた録音機器で、
オープンリールと同じ1/4インチ(約6.3mm)、それに伴い録音トラック幅も約2倍、
さらにテープ速度をカセットの2倍(約9.5cm/秒)を標準規格として開発されました。
アナログのテープレコーダーは、トラック幅が広いほどダイナミックレンジが、
テープ速度が速いほど周波数特性が高音域方向に広がり、また走行速度のムラも減るので、
コンパクトカセットよりも遥かに性能の良いレコーダーになった…はずでした。

また、音質向上だけではインパクト不足と思われたのか、
テープにコントロールトラックを設け、そこに記録する信号によって
曲の頭出しや特定位置間のリピートなど、それまで勘に頼っていた操作を
直感的にこなすための機能に対応していました。
それはあくまでも後々への「対応」であって、実際には
それらをきちんと生かしていた製品はほとんどありませんでしたが(^^;)

エルカセットを採り上げた記事の一例です(「playtape」1976年12月発行):
LCassette01.jpg
(画像上クリックで大きな画像が開きます)

エルカセットはその名の通り、テープ自体がコンパクトカセットの約2倍(体積では約4倍)
と大きく、対応するデッキは画像を見て頂くと分かる通り大変高価でした。

エルカセットは結局2~3年と言う超短命に終わりましたが、その理由については
画像の記事の前項に書いてあった解説が、まるでその後の運命を予知するような記述で
大変的を射ているので、そのまま転載すると…

「…(エルカセットは、オープンリール、カセットに続く)まさに第三のテープレコーダーとして
注目を浴びています。 しかし、このシステムの特徴をそのまま裏返せば、
音のクオリティの点ではオープンリールに一歩譲り、コンパクトという点では
カセットの方が勝ることになるわけで、(中略)いまひとつ商品としての説得力が
乏しいといった判断をされがちです。」

その通り!要は商品として中途半端だったんですね。

エルカセットは日本生まれのため、コンパクトカセットのようにその開発元の
フィリップス(オランダ)が厳格に管理していた規格に縛られる事なく、
より自由な製品開発が可能で、先述のコントロールトラックを利用して
新しい機能を加える事も考えられていたのに、
メーカーは「音質さえ良ければ必ず売れる!」と判断し、機能等が十分に練られる前に
商品化してしまい、結果的に失敗したわけです。

ここで重要なのは「音質さえ良ければ売れる」の部分です。
それは、エルカセット発売から40年近く経った現在も、
オーディオ機器を手掛けるメーカーが抱き続ける幻想と言えます。


現代は音楽を聴く手段がiPodやウォークマンに代表されるポータブルオーディオにシフトしていて、
自宅の部屋でじっくりと音楽を楽しむ習慣がかなり失われています。

ポータブルオーディオは自宅よりも外出先や通勤・通学時に使用されるのが主であり、
その際に高音の伸びがどうの、声の艶やかさがどうの…等はあまり気にされず、
それよりもハッキリした音でより多くの曲が聴ければいい、と思う人の方が、
より高音質で聴きたいと思う人よりも遥かに多いのが実情でしょう。

そのような情況においては、ハイレゾは言わば過剰品質なわけで、
しかもそのための音源は別に購入しなければならないとなると二の足を踏む、
あるいは全く関心さえ持たない人が大多数であるのは当然なんですね。


ハイレゾ対応として、従来の音源を新たにマスタリングしたり、場合によっては
ミックスからやり直したりと、付加価値に魅力があるソフトが増えるのは楽しい事ですし、
市場が変化すれば、例えばかつてのように自宅でオーディオを楽しむ風潮が広まれば、
その真価を発揮する事につながると思います。
私は個人的にはそうなってほしいと願っています。


しかし、CDが発売されて今年で33年経っており、その間に蓄積された資産をどうするのか。
それを整備する方が、ハイレゾを広めようとするよりも現実的ではないでしょうか。

例えば、CDの音声データを読み出し、それを多ビット・高サンプリング周波数で高精度で再構築し、
マスタリングやカッティングの際に失われたであろう音データまで復活させ、
改めて高精度にD/A変換する事で、従来のCDを何倍もの高音質で再生する、
その一連のプロセスをリアルタイムにこなすCDプレーヤー。
そのような製品が開発されれば、従来のCDが重要なソースであり続ける事が可能になります。

****************************************

話を戻します。

エルカセットが失敗に終わったのは先述事項以外にも色々な原因が考えられますが、
現実には、当時すでにコンパクトカセットが一般的に十分な性能に達していたために、
それ以上の性能の製品、あるいはまだ先行きの見えない製品に投資したいとは思われなかったのも大きい。

同じように、ハイレゾが広く普及する兆しが見えないのは、とどのつまり、
それが必要だとは思われていないからです。
mp3、flac等の圧縮音源の音質も、普段使いでは十分なレベルに達していると言う事でしょう。


ただ、私も含め、ハイレゾが如何なる力を秘めているか、十分知られていないのも確かであり、
性能云々を超えた次元で、例えば同じ音楽でもハイレゾで聴けば豊かな気持ちになれる…
などの効果が見出され、それが周知されれば普及は一気に進むものと思いますし、
今後の動向はぜひ、私自身も実際に自分で音質や可能性などを確かめながら
注視し続けていきたいと思います(^^)

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コメント 4

ひろ

こんにちは。
ハイレゾ…おぉ~新しい時代が来るか~?っと思いきや、多分エルカセットみたいな感じで終わりそうな感じがします。

エルカセット…FM誌系によく載ってました。懐かしいです。
何何~~このカセットの大きさは!って思っていたらいつの間にか見かけなくなってました。その内、メタル対応や、ドルビーの進化や各社ノイズリダクションの競い合い…。

レコードの時代も終わり…CDへの移行…。持っていたレコード全てを後輩にやり、CD化を待っていたがなかなか進まず…未だになってない物もあり未だに後悔してる物もあります。

先日、NHKのニュースでレコードの売り上げが伸びている。
若い人達も好んで購入。レコード制作も大忙し。…など、取り上げてましたね。今のアーチストもレコードを出したりしてるようですし…。
個人的にはレコードの音源がCDよりも優れてると思ってます。
加齢による聴覚の衰えもあるでしょうし、レコードで育ってる故の偏見もあると思いますが…。
レコードプレーヤーも売れ行き好調らしい。

オークション覗いても、中古レコード、レコードプレーヤーは好調です。
自分も、プレーヤー2台。
あとは、70年代のラジカセが好きで数台。

wavにてハイレゾに編集変換して楽しんでます。
人それぞれの楽しみ方が分かれて来てるような感じでしょうか…。

コンポでCDがハイレゾで流れるようになると売れると思うんですが…自分たちより上の方々はカセット派、下の方々はスマホ系…。
どうなるか転ぶか…。

by ひろ (2015-04-20 10:15) 

ぽぽんた

ひろさん、こんばんは! ちょいお久しぶりです(^^)

私も率直に言って、今のままだと業界が普及させたい意味でのハイレゾは自然消滅の運命を
たどってしまうだろうと思います。

エルカセットは着想は良かったのに、一般にはカセットがでかくなって面倒くさくなっただけに
映ったのかも知れませんね。 実はコンパクトカセットが出現する前にアメリカのRCAで
かなり大きめなマガジン式テープが開発された事があり、それも失敗しているんです。
歴史は繰り返す…結局は出現した時の衝撃度の問題、かもですね(^^;)

私もそのニュースはチラッと観ましたが、どうもストレートに受け取れないんです。
我々の学生時代は、レコードとテープしかない世の中でのレコードでした。
今はCDや配信など、使い勝手が思い切り便利なものの中でのレコードであり、
若い人が物珍しさで飛びついているだけに見えてしまうんです。

私もレコードは200枚以上今も持っていますし、回転するレコードを眺めながら
音楽を聴くのは大好きです。 ただ、再生音にノイズも歪みもないレコードはまずありませんし、
大きな音でビリついてガッカリする事も何度も経験しているので、CDで聴く方が気楽なのも
確かなんですよね。
私はむしろ、レコードよりもテープ派かも知れません(^^;)
最近はやっていませんが、リールが回ってメーターがビンビン振れているのを見るのが好きで…。

…それはともかく、やはり経験していないと文章を書いていても説得力がないので、
なるべく早いうちにハイレゾは自分の耳で検証してみたいと思っています。

by ぽぽんた (2015-04-21 23:38) 

小がめら

ぽぽんたさん、こんにちは。また少しお久しぶりです。

私、エルカセットって知りませんでした。当時私などは\59,800クラスのカセットデッキを買っていましたから、このお値段はいずれにしても無理でしたね。

ぽぽんたさんの解説を読みながら私も思いましたが、テープと言うメディアがコンパクトカセットテープと言う形でそれなりの性能と価格で普及した後、その次をどう読むかがカギになったということですね。

さらに小型化したマイクロカセット(でしたっけ?)は留守番電話の録音用程度でしたし、このエルカセットも「カセットテープでそこまで要るかい?」っていうことだったのでしょうね。確かに曲の頭出しなどはテープ録音の大きな課題ではあり、それはVHSなど録画でも同じでしたね。


話は脇にそれますが、私の中ではカセットテープは、デッキの操作面では、左右独立の録音レベル調整ができて、レベル指針の応答速度はLEDインジケータが補って、ヘッドの動作はICロジックコントロールとオートリバース、Bタイプドルビーでほぼニーズは満たされてしまいました。音質面は必要に応じてCrテープやメタルテープを使用。FMのエアチェックはノーマルテープで間に合わせていました。

後年のテストでわりと高い周波数の音も聞こえる耳であったことが判りました(この年でも野良猫よけの「キーン」は良く聞こえますし)が、音楽という面での音質はあまり良く聴き分けられませんでした(こういう面は聴力より知力の問題なのでしょうね)。なので、ひろさんに桜田淳子さんの演奏やオリカラの違いを教えていただいてようやく聴き分けられた、それでもやはりわからないもの、いろいろです。


話を戻しますが、結局のところアナログ盤をカセットテープに落として聴いていた私のような庶民は、CDになったことで一挙に「それで十分」になってしまったのではないでしょうか。

それがさらにMP3でMDやCD-RにCD何枚分も収納できるようになり、さらにICメモリーになることで便利になりましたが、車内などの騒がしい空間で聴くにはMP3で十分だと思います。大音量は難聴を招くと聞いているので、私はなるべく大音量は避けています。なので尚更MP3で十分なのですね。


ところで、ご存知でしたら教えていただきたいのですが、最近のCDでは、Bru-Rayの技術で盤面のピットの形状がより高精度になったことを強調する製品があります、従来のCDプレイヤーで再生する限りは、ピットの形状の精度は音質に影響するのでしょうか? 33年前にCDが出た頃、「デジタル信号は1か0が判別できれば良いから、アナログ信号と違って多少乱れても1か0の判別さえ付けば正しく再生できる」という触れ込みだったのを記憶しています。

サンプリング周波数や分解能が変われば別ですが、サンプリング周波数44.1kHz、分解能16bitを使っている限り、マスター音源が同じ(またはスタンパに記録されている信号が同じ)であれば、昔のCDであっても、最近のピット形状が高精度になったCDでも、再生装置が従来のCD機器であれば(アナログ回路部分やスピーカー等に性能の差がない限り)、音質に違いはないのではないかと思うのですが、如何なのでしょう?


私レベルのユーザーであれば、ハイレゾ化にするよりも、ポータブル再生機のメモリ容量が上がってMP3でなくMP4やwavなどより大きな容量のデータでたくさん持ち運べるようになる方が、音質面では十分でありながら便利な気がします。あとはステレオイヤフォンにいいものを選ぶということでしょうか。

気のせいか、何年か前ですがSONYのWalkmanに最初に付いてくるステレオイヤフォンって、なにげに結構音質が良かった気がします。断線したりしてあとから似たようなものを買い直すと、だいぶ音質が落ちるような気がします。


アナログ盤がCDになったのは大きな変革だったと思います。最近はダウンロードが増えてはいるようですが、データが圧縮されてネット配信しやすくなったという以外、本質的には変わっているわけではないと思います。次世代はどうなるのでしょうね。

こんど日本に帰国する知人が、ハイレゾ対応のCDプレイヤーにプリアンプを接続し、4つの帯域に振り分けてからそれぞれを真空管式のメインアンプで増幅し、それぞれの帯域用のスピーカーで再生していました。さすがの私でさえも音の良さは判りました。でも日本でその威力を発揮するには、いろいろな面でそれに対応した空間が必要ですよね。

私はご指摘の自宅でオーディオを楽しむ風潮の広がりは、ひとつのカギだと思いますが、それには日本の住宅事情の変化も必要ですね。それとも、カラオケボックスのように、オーディオボックスのような周囲を気にせず大音量で聴ける空間を時間幾らで提供するビジネスが普及するのでしょうか。

長話ですみませんでした。それではまた。

by 小がめら (2015-04-26 12:39) 

ぽぽんた

小がめらさん、こんばんは! ちょいお久しぶりです(^^)/

記事を丹念に読んで下さったようで、ありがとうございます。
カセットにはいくつか種類があって、古くはRCAが打ち出したマガジンテープ、アイワが独自の規格で発売したカセット(アイワではマガジンケースと呼んでいました)、広く普及したフィリップス規格のコンパクトカセット、次に日本だけのエルカセット、小がめらさんもご存知のマイクロカセット、DAT、そして切手ほどの大きさのデジタルマイクロカセット…と、私が知る限りでもそれほどの種類があるんです。
しかし結局残ったのはコンパクトカセットだけと言う厳しい世界ですね(^^;)

普及のポイントはやはりタイミング、そして一般のニーズに適度に応えているもの、と言う事になると思います。
コンパクトカセットの普及にはさらに、フィリップスが自社の規格を世界に、条件付きながら無償公開した事が大きかったようです。
そして、本家としては音声メモ程度の目的で作ったカセットを、音楽を鑑賞できるレベルまで性能をうんと引き上げた日本のメーカーの貢献度が多大だったんですね。

で、そんな日本でエルカセットが出てきた頃には、一般ではもう普通のカセットで十分…と認識されてしまっていたわけで、現在のハイレゾもそれと同じで、一般にはmp3で十分、となっているのが現実だと、私は思っています。

カセットの話に戻りますが、性能が良ければ小さいほど良い…ともならないようで、マイクロカセットもデッキタイプのレコーダーがあったのですが見事にコケましたし、デジタルマイクロカセットに至ってはいつの間にか消滅してました。
あまり小さすぎても頼りなく、安心して使う気になれないからかも知れませんね。

CDのピットについてですが、正直なところ、私にはかなり胡散臭い話に思えます。
CDプレーヤーの仕組みは、データを読み取り、それを補正をかけながら組み立て直し、メモリーに溜めこんで順次D/Aコンバーターに送り、アナログ変換して音声信号を作り出すと言うものですが、バーコードと同じく、読み取って後ある単位で用意された答えになるかを計算し、合わなければ読み取り直したりデータを訂正する作業が常に行われています。 盤面が汚れていたりでうまく読み取れないとエラーが多すぎて処理しきれなくなり、音飛びとなるのですが、大抵はD/A変換する前のメモリーにいったん溜め込む事でそのエラーは吸収されます。 つまりピットを高精度にしてもしなくても、同じ音楽データを記録し、それを読み取る事については、データを溜めるメモリーが存在する限り差が出るはずは無いし、あってはいけないんですね。

ただ、ピットの形状が高精度になれば読み取りエラーが減る→ピットを追いかけるためのサーボで使われる電流が安定する→電源回路の出力が安定する→アナログ回路に供給する電源も安定する→音質が向上する…と言った理屈はあり得るかな、と思います。
それにはCDの偏芯も大切な要素ですが(^^;)

最近レコードが見直されていると言われていますが、私はそれは音質云々よりも、ジャケットを含めた総合的な価値が見直されていると思いたいんです。
仰るように自宅で音楽を楽しむのは色々な事情が絡んで難しい面がありますが、かつては現在よりも遥かに住宅事情は悪かったのにどうにか工夫して鳴らしたりしていたものです。
そこに関わってくるのは、環境よりも、音楽を聴きたい、体で感じたいと思う欲求なのかも知れません。
今は娯楽が沢山ありますから、音楽を聴く事に情熱を傾けたいと思う人が少ないのかな…とも考えます(^^;)

by ぽぽんた (2015-04-26 23:12) 

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