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嘘でもいいから / 奥村チヨ

今聴いてもホント、画期的な曲です(^^):

嘘でもいいから.jpg
 
チャートアクション

「嘘でもいいから」は奥村チヨさんの21枚目のシングルとして1970年9月に発売され、
オリコンシングルチャート最高11位(同年11月9日付)、同100位内に17週ランクされ
15.3万枚の売り上げとなるヒットでした。


作家について

作詞は川内康範氏。 森進一さんの「おふくろさん」など数多くのヒット曲を持つ作詞家です。
奥村チヨさんへの楽曲提供はこの曲が初めてのようですが、あの強面(失礼!)なイメージからは
おおよそ想像もつかない歌詞ですよね。

作曲は筒美京平氏。
筒美氏は奥村チヨさんへは「あなたに逢いたい」(1967年12月)を皮切りに数曲提供し、
シングルではその全作品について編曲まで担当しています。


歌詞について

前回にクイズとして、この曲について「断片的にでもきっと聴き憶えがあるはずです」
などと書かせて頂きましたが、それは私自身そうだったからなんです。

当時歌謡曲番組などは一切観せてもらえなかったのですが、どこから入ってきたのか、
♪たまには頭を撫で撫でしてよ♪ のフレーズだけは知っていてよく歌っていたんですね。

通して聴いてみてもこの曲にはかなり掟破りとも言える歌詞が散りばめられていて、
「撫で撫で」を初めとして「真顔になって…妬き妬きしてよ」「涙で抱き抱きしてよ」…と、
当時のPTAが放送禁止を叫びそうな、ふしだらとも言われそうな勢いです(^^;)
もし学校で給食時に流したりしたら、すぐに教師が飛んできて「やめろ!!」と怒鳴った事でしょう。

それにしても1969年の紅白歌合戦で「恋の奴隷」を嫌ったNHKが、
翌年の同番組でこの曲を選んだのは不思議な気がします(^^;)

ただ奥村チヨさんとしてはこの路線には相当抵抗があったようですし
(前々作「恋狂い」のレコーディングでは泣き出してしまったそうです)、
「恋の奴隷」「恋泥棒」「恋狂い」から「甘い生活」(1971年4月)までの7曲続くお色気路線によって
キワモノのイメージが付いてしまった事も確かなんですね。

中でも、実はこの「嘘でもいいから」は奥村チヨさん本人が最も嫌った楽曲だったようです。


歌唱について

奥村チヨさんにとっては最も不本意だったとされるこの作品でも、
そんな事は微塵も感じさせない、よく知られるところの「チヨ節」全開の歌唱がたっぷりと聴けます。

♪たまにはあなたも…♪ などでの端唄を思わせる音使い(言葉の発音、音程の操作)を駆使し、
♪しつこいなんていわないで ウゥ~ン…♪ と歌詞にも書けず楽譜にも書けないような甘え声
(前作「くやしいけれど幸せよ」では ♪くやしいけれど ウン!くやしいけれど♪ と
都はるみさんがよく使うような唸りに似た声も聴けます)、
♪妬き妬きしてよ♪ では完全に歌唱を逸脱したような、面白がって笑っているような、
全歌謡曲を通してもこの曲でしか聴けないと思われる歌い方まで楽しめます。

しかし極めつけは ♪笑顔になってぇ~ン♪♪真顔になってぇ~ン♪♪深刻ぶってぇ~ン♪
…でしょうか(^^)

音をしっかりと伸ばしてビブラートをかけているのが ♪嘘でもいいから~♪ の部分だけで、
それ以外はまるでドラマの演技でセリフを発しているような雰囲気なんですね。

しかしメロディーの音程とリズムはしっかりと掴み、妙な操作を加えていないので、
ドロドロとした雰囲気にならずに最後まで楽しく聴けるのでしょう。

「恋狂い」もそうですが、自身が嫌っていてもこれほどの歌唱を残せるのは、やはりプロなんですね。


楽曲について

構成はシンプルな3コーラスで、キーはGメジャー(ト長調)、転調は無しです。

奥村チヨさんのシングル楽曲は、1967年夏のヒット「北国の青い空」以後はほぼ全部短調であり、
「嘘でもいいから」が唯一の長調曲と言えます。

筒美氏による作品を含め、お色気路線の楽曲は短調では独特の雰囲気を出しやすい反面、
重く感じられる事もあり、
2作、3作と続くと聴く側が飽和してきます。

「恋の奴隷」から1年過ぎ、奥村チヨさんの楽曲にもそんな感覚が見え隠れし始めた頃に、
明るく軽い「嘘でもいいから」がカンフル剤として作られた、と思われるんですね。
当時東芝レコードで奥村チヨさんを担当していた草野浩二氏も
「筒美さんにはお色気路線の間の変化球のような作品をお願いした」と語っています。


久しぶりにコード進行など…

イントロ: G・Gaug・G6・Gaug | G・Em・G・B7・C・G
Aメロ: G・Em・C・G G・Em・D7 G・Em・C・G Am・D7・G
Bメロ: Em・Bm・C・Bm・D7
Cメロ: G・Bm・Em・C G・B7・C・C/D・G
間奏1: Em・Bm・C・D7・G
間奏2: G・Gaug・C・C/D・G
コーダ: G・C・G・B7・C・C/D・G

歌メロ部分では難しいコードなどは特になく、
と言うよりはメロディー自体に力があり、コードで凝る必要もないようです。
キメの ♪嘘でもいいから~♪ でも C・Bm・D7 と素直なものになっています。

ただ、イントロと間奏2でオーギュメント(コードの第3音を半音上げる)が使われ、
単純なだけで終わらない事を示しています。

もう一点、イントロとコーダはメロディーはほぼ同じであるのに、
コード進行が少々違う事に注目して下さい。


アレンジについて

よく「フレンチポップスのような」と例えられるこの曲ですが、
それに通ずるような明るさ、軽さを感じさせているのは、
ブラスやストリングスのフレーズに長音をあまり使わない、
スパっと断ち切るような演奏が多用されている事も大きいようです。
それはイントロ、間奏、そしてオブリガートと、
どこの演奏をとっても生かされています。

楽曲全体に明るさを感じる要素にコード進行もあります。

上記のコード進行を見ると、例えば間奏1で Em・Bm・C・C/D・G となっていますが、
通例だと Em・Bm と動いてくると大抵次に Am・D7…とつながる場合が多いのです。
Am はその名の通りマイナーコードですから、それ単体の響きはやや暗い感じになります。
そこで Am の代わりに平行調コードの C を入れる事で、
一旦 Em で暗くなりそうだった流れが救われる感覚が生まれます。

歌メロでは通例通りにコード進行している部分がありますが、
イントロや間奏、コーダでそのような通例外れのコード進行を使う事で、
全体の印象がより明るいものとなる効果があるようです。


ストリングスのアレンジが凝っているのは筒美氏の特徴の一つですが、
この曲では3回ある歌メロへの導入部のフレーズがそれぞれ違っているのが耳を惹きます。


サウンドについて

1970年の作品ですが、楽器の構成や全体の雰囲気、そして音質など全部含めて、
筒美氏の1975年頃の作品と遜色ない仕上がりとなっている事に驚かされます。

ボーカルに付けられたディレイ・リバーブの上品さ、
70年代のそれそのものと言えるストリングス、
ブラスのクリアさ、右でつつましく、しかし忙しくアルペジオ演奏しているアコギ等々、
聴き込むほどにオーディオ的にも引き込まれるものを持っています。

最後の最後でいきなりベースがブーン!と音量が上がるのはご愛嬌ですね(^^)


付記

このレコードのジャケ写ですが、色々な書物で「ケバい」って書かれているんですよね(^^;)
この時代に流行していたメークのためでもあるし、
表情がどこか退廃的に見えるからかも知れません。

そんな写真の脇に毛筆で「嘘でもいいから」とあるもので、
それだけだと重く暗い曲では…と勘違いしそうなのですが、
レコードを買って聴いてみてその落差にびっくり!
と言う人が多かったのではないでしょうか(^^)


奥村チヨさん本人の意思には反していたお色気路線時代ですが、
シングル以外にも「何だコレ?!」とびっくりする楽曲が多く、
その幅広さは恐るべきものがあります。

その中でも、私としては「証拠」(CD化もされています)なる楽曲がイチオシです。
ここで詳しく書いても面白くないので、まずご一聴を!
これほどユニークな曲、滅多にありません(^^)


「嘘でもいいから」
作詞 : 川内康範
作曲 : 筒美京平
編曲 : 筒美京平
レコード会社 : 東芝音楽工業
レコード番号 : TP-2330
初発売 : 1970年9月5日

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シノピー

ぽぽんたさん、おはようございます。
これでしたか!前回のクイズの答えの楽曲が奥村チヨさんの楽曲だったの。

奥村チヨさんの楽曲の中で、自分が好きなのはチヨ節を極力抑えたヒットシングル「終着駅」でありますが、ここから歌声を変えたという説も・・・・・・


by シノピー (2016-08-29 01:49) 

もとまろ

ぽぽんたさん、おはようございます。

今、ひさしぶりに「嘘でもいいから」を聴きました。
こんなに楽しい歌だったとは…それと、チヨさんの「お色気路線」は、この歌でやり切った、出し切ったように思います。ラジオで覚えた「中途半端はやめて」チヨさんご本人ではなく“歌ってみた”を聴いた「甘い生活」は、なんか物足りなく感じるんですよね。

歌い方については、ぽぽんたさんが触れてないところでは、「よそにいい人」の「いい」を、彼に甘えるかわいこちゃんのアピールみたいにしたくて、妙に強調してるように聴こえます。そこもいいですね。
川内康範先生の歌詞は、一見意外に見えるけど、先生らしい「真実の愛」にもっていく過程を歌っているように聴こえます。「本当に嘘なら、ナデナデも妬き妬きも抱き抱きもできないだろ?」と、先生から男達に問いかけているような…。

チヨさんが「嘘でもいいから」が嫌いだったとは、ちょっとびっくりです。
「恋の奴隷」が嫌で嫌でしょうがなかったのは何回も聞きましたが、この時期になると好き嫌いを超越して、「ま、いっか。有名になれたんだから」と心底プロに徹していたものと思ってました。だからこそ、「終着駅」を歌えて嬉しかったんでしょうね。

で、このジャケ写は、ガングロのお姉ちゃんに見えます。

長々お邪魔しました。
by もとまろ (2016-08-29 09:24) 

ぽぽんた

シノピーさん、こちらでもこんばんは!

私も「終着駅」は好きで、当時レコードは買えませんでしたが、FMのランキング番組で
よく聴いていたものです。

by ぽぽんた (2016-08-30 23:27) 

ぽぽんた

もとまろさん、こんばんは!

奥村チヨさんの曲にはやや重い感じがするものも多いので、「嘘でもいいから」は
とても軽快で楽しく聴けますね(^^)
「甘い生活」はぜひ奥村チヨさん本人の歌唱を聴いてみて下さい。
恐らく違う感想を持たれる事と思います。

歌唱についてはどこをとっても意味がある歌い方なので、書き始めるとそれだけで
ブログ1回分消費してしまいます(^^;)
そうですね、歌詞についてはそのような意味合いがあるかも知れませんね。
私の場合は、この曲は軽快さと明るさ、そして筒美さん独特のキャッチーなメロディーが身上
だと思うので、あまり深く考えないで楽しんでます(^^)

「嘘でもいいから」については、その後「なでなでして、とかやきやきして、なんて
自分と違い過ぎて恥ずかしくて嫌だった」などとテレビでも語っていました。
松尾和子さんに似て、素のチヨさんはわりと男っぽい、サッパリした人なんですね。

うんうん、確かにこのジャケ写はガングロ姉ちゃんに見えますね!
実は「何でまたこんな曲を歌わせるのよ」と不満を表した顔だったりして(^^;)

by ぽぽんた (2016-08-30 23:43) 

シノピー

ぽぽんたさん、おはようございます。

終着駅で歌われる時の歌唱法は1974年に「二人でお酒を」で再ブレイクを果たした梓みちよさんや故越路吹雪さんのような歌唱法をしていますね。
それ以降のシングル楽曲は知らないが、その歌声で歌っているんでしょうか?





私も「終着駅」は好きで、当時レコードは買えませんでしたが、FMのランキング番組で
よく聴いていたものです。
by シノピー (2016-09-01 00:32) 

ぽぽんた

シノピーさん、こんばんは! いつもお返事が遅れて申し訳ありません。

う~ん、梓みちよさんや越路吹雪さんのような歌唱とはちょっと違うと思いますが(^^;)
ただ、それまでにない感情の込め方とか、そういった事は十分に感じますね。

by ぽぽんた (2016-09-03 22:15) 

シノピー

ぽぽんたさん、こんばんは。返信、ありがとうございました。

梓さんといえば、「♪こ~んにちは~あっかちゃん♪」。この楽曲が彼女の代表曲ですけれども、デビュー当時はいわゆるアイドル歌謡といった感じの楽曲を出していたそうです。だか、以降は目立ったヒット曲がないことと、自分の意向にそぐえないなどから、1974年に「♪うっらめ~こっなっし~で~♪」とやや太き声質の低音で歌う「二人でお酒を」で再ブレイクを果たし、以降は「メランコリー」などの大人寄りの楽曲へチェンジしていったのはすごい。

歌唱よりも歌声が少し似ていましたから。




by シノピー (2016-09-04 19:12) 

きゅーぴー

直接この楽曲に関係ない話ですが、広く70年代歌謡曲関連の話題があったので、ちょいとお伝えします。
先週土曜日に盛岡市内で、学校関連のイベントがあり、そのゲストの一人が卒業生の作曲家戸倉俊一さんでした。
イベント終了後に関係者だけのミニパーティがあったので、スキを見て?以前このブログに投稿した、ピンクレディがアメリカ進出して最初のテレビ番組「レイフギャレットショー」を、リアルタイムで見た話を、お酒片手で伝えました。
戸倉さんはあまりこの話に食いついてこず、むしろレイフギャレットをプロデュースした話を熱心にされました。対応に何か違和感あるなと思っていたら、同行していた奥様が「ピンクレディがアメリカに行く頃は、もう彼女らからは手を放していたんですよ」と教えてくれました。
こちらも番組を見た1年以上前から日本にはいなかったので、そんな事情も知らずにいました。まあ、ミーハー的にちょっとしゃべったからいいやと自己満足して、その晩はお酒を飲みましたとさ。
メデタシメデタシ。
勝手な話題で申し訳ありません。
次回は記事に沿ったことを投稿したいと思っています。




by きゅーぴー (2016-09-05 18:12) 

ぽぽんた

きゅーぴーさん、こんばんは! お返事が遅くなり申し訳ありません。

そのような機会をお持ちになったのは羨ましい限りです。 貴重な体験、ですよね(^^)
細かい事を言ってしまうと、ピンク・レディーがアメリカ進出を試みたのは1978年から
翌年にかけてなので、その頃は楽曲的にはしっかり都倉さんが関わっていたはずです(^^;)
そのような話題も歓迎ですので、いつかまたよろしくです。

by ぽぽんた (2016-09-07 22:49) 

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