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初恋のメロディー / 小林麻美

ライオンの歯磨きのコマーシャルが印象的でした:

初恋のメロディー.jpg

チャートアクション

「初恋のメロディー」は小林麻美さんのデビュー曲として1972年8月に発売され、
オリコン最高27位、同100位内に17週ランクされ9.9万枚の売り上げを記録しました。
Wikiで小林麻美さんのページを見ると「オリコンで18位を記録」とありますが、
その筆者が何を見てそう書いたのはわかりません(^^;)
そのページは他の記述も、言葉の選択を含めややいい加減なのが気になります。

B面曲「海辺の白い家」は、「初恋のメロディー」と同日にビクターから発売された
麻丘めぐみさんのファーストアルバム「さわやか」にも収録されています。
麻丘めぐみさんの楽曲としてリストに入れている通信カラオケもありますね。


作家と楽曲について

作詞・橋本淳氏、作編曲・筒美京平氏の、当時では鉄壁と言えるコンビの作品です。

知っている人が聴けば、多くの人が同作家コンビによる作品である
弘田三枝子さんの「涙のドライブ」(1968年)を思い出すはずです。
それほど、歌詞の内容はそっくり…と言うよりも再利用に近い作りなんです。
特に「涙のドライブ」での ♪私のお家は もうすぐそこね♪ が、
「初恋のメロディー」では ♪私のお家は すぐそこなのに♪ …何だかねぇ(^^;)

現在でこそ高評価を受ける事の多い70年代歌謡も、当時は多くが「粗製乱造である」
と言われたものですが、そんな作りを知るとそれもちょっと頷ける気がします。


歌メロは弱起で始まる事が基本で、サビ中盤の ♪せめて 今だけ♪ だけを強起にして
印象を強める工夫がされていますが、全体にコード進行に素直に従った滑らかなものです。

アレンジに注目すると、控えめなようで意外に力強いドラムス、
ツインギターによるお洒落なイントロやコーダのメロディー、
トランペット主体のブラス、派手な動きは無いものの全体をしっかり支えるストリングス、
彩りを加える電気ピアノ…と、刺激的な音が一切なく、
耳あたりが良くてさわやかな印象が残る、
日本では筒美氏独特と言えるイージーリスニング的なサウンドです。

ただ、これはあくまでも私見ですが、同コンビの作品で「初恋の…」より2ヶ月後に発売され、
岡崎友紀さんの最大ヒットとなった「私は忘れない」に音楽的に似過ぎているのが気になります。
構成、テンポ、キー、アレンジ、雰囲気など、どれをとっても双子と言って良い作品です。
…って「私は忘れない」の回にも書いたような(^^;)


楽理ノート

リズムはごく普通の8ビートです。

キーは A♭メジャー(変イ長調)で、他調への転調等はありません。
しかしコード進行を見ると、平行調である Fマイナー(ヘ短調)としきりに行き来していて、
小林麻美さんのキャラクターであるか弱さやどこか寂しげな雰囲気を
音楽の上でも生かそうとしているように感じられます。

一部のコード進行を書き出してみると…

Aメロ: (A♭M7)Cm7・B♭m7・E♭7・A♭・F7
     これが 最後の  接吻なのに

     B♭m7・ E♭7・ Cm7・ Fm7・ B♭7・ E♭7
      あなたは    何を    ためらうのかしら

Bメロ(サビ): D♭・Cm7・B♭m7・E♭7・A♭
       すてられたのは くやしいけれど

        Fm・C7・D♭・D♭m6・E♭7sus4・E♭7
        せめて今だけこの胸をあたためて


楽器と定位

左: エレキギター シェイカー ストリングス(Vn) 電気ピアノ

中央: ドラムス ベース エレキギター トロンボーン

右: トランペット ストリングス(Vc、Vla) 電気ピアノのエフェクト音*

*電気ピアノの音にディレイをかけ、ディレイ音だけを右に入れて広がりを作っています。
 またトレモロ効果も部分的に使用しています。

右に定位しているストリングス低音域(チェロ、ビオラ)は、
サビ以外でも全音符で鳴らされてサウンドの基盤を支えています。


最後に

小林麻美さんは、最も人気があったと思われる1973年夏に「自分は芸能界には合わない」
と月刊明星誌上に手記を残し一旦引退しましたが、
翌年秋にやはり月刊明星誌上に手記を発表し、カムバックしました。
それには、筒美京平氏との確執があった事などが書かれています。
それらの記事に演出があるか否かは知り得ませんが、当時のアイドル芸能の事情が
垣間見える記事として、私には強く印象に残っています。

1984年、イタリアの歌手ガゼボのヒット曲「I Like Chopin」をカバーした
「雨音はショパンの調べ」がオリコン1位を獲得する大ヒットとなりました。
男性歌手による外国曲をカバーしオリコン首位となった唯一の女性歌手なんですね(^^)


「初恋のメロディー」
作詞 : 橋本淳
作曲 : 筒美京平
編曲 : 筒美京平
レコード会社 : 東芝音楽工業(TP-2703)
初発売 : 1972年8月5日

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久しぶりに「サウンドインナウ!」について…

FM東京の音楽番組「サウンドインナウ!」の名物コーナーであった「カラオケコーナー」
を私がエアチェックし始めたのは1973年(昭和48年)1月の最初の放送からでした。

しかし番組自体は、始まったのが1971年(昭和46年)4月なんです。
番組開始当初から「カラオケコーナー」があったのかどうかは定かでないのですが、
もしあったとしたら、私にとって1年8か月も空白の時期があり、
その間にどんな曲のカラオケがオンエアされたのだろう…と考えると結構悔しくて(^^;)

幸い、このブログを贔屓にして下さっている方からその期間にオンエアされた中から
数曲提供して頂いた事があり(だいぶ前にこのブログで音源を紹介した「純潔」
「哀愁のページ」(南沙織)、「あなたに賭ける」(尾崎紀世彦)、
「夜汽車」(欧陽菲菲)など)、欲求不満をいくらか解消させて頂いたのですが、
その期間には今でも歌い継がれる曲が他にも多数生まれていましたし、
もっと早く番組を知っていたかった…と今も時々考えてしまいます。


「サウンドインナウ!」でDJをしていたのは作曲家のすぎやまこういち氏で、
多数のヒット曲を持つ一流音楽家であり、
また筒美京平氏の師匠としても知られる偉大な存在です。

筒美京平氏が師事していた頃のすぎやまこういち氏は厳しかったそうで、
筒美氏も「あの頃のすぎやまさんは怖くてね、レッスンに来る歌手はみな震えてましたよ」
と語っているほどです(^^;)

しかしすぎやま氏は筒美氏の音楽を高く買っていたようで、
「カラオケコーナー」で採り上げられる楽曲も、
今思うと筒美氏の曲が最も多かったような気がします。

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と言う事で、今日は久しぶりに筒美作品のカラオケを貼りますね。
どちらもこのブログでは既出の麻丘めぐみさんの楽曲ですが、
記事にカラオケ音源を貼るのは4年あまり前に止めているので、
その後から読んで下さっている方には初めての音、と言う事で。

1曲目は「芽ばえ」。
これは先述した、私が「カラオケコーナー」をエアチェックし始めた最初の曲で、
レコードやCDには使われた事がない、「サウンドインナウ!」でしか聴けなかった音源です。
モノミックスになっているのが残念ですが、独特のリバーブ処理は歌入りと同じですし、
追っかけの ♪離れないわ~♪ がしっかり入っているのが聴きどころです。


もう1曲は「アルプスの少女」。
同じ音源が紙ジャケ復刻CD「めぐみと若い仲間たち」に収録されていますが、
まさかこの音源が使われるとは…
詳しくは「アルプスの少女」の回の記事を読んで頂ければわかると思いますが、
明らかにテストミックスなんですね。
CDには、ボーカルがなぜかちょっとだけ入っている部分に他の同じフレーズから
パッチしたものが収録されているのですが、よく聴くと編集箇所がバレバレ…意外とずさん(^^;)
って事で「サウンドインナウ!」音源です。


* 両曲とも間奏後にフェードアウトさせています。


それではまた来週(^^)/

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野ばらのエチュード / 松田聖子

B面「愛されたいの」についてはだいぶ前に書いたような(^^;)

野ばらのエチュード.jpg

チャートアクション

1982年10月に発売された、松田聖子さんの11枚目のシングルです。
これまで8曲連続でオリコン1位を獲得していて、
この曲の頃にはその連続記録を伸ばす事をかなり意識していたようです。

結果、この曲でもオリコン1位を獲得(同年11月8日~22日付の3週連続)、
同100位内に17週ランクされ45.0万枚の売り上げを記録しました。


作家について

作詞は「白いパラソル」から続いている松本隆氏。
作曲は「白いパラソル」から1年余りぶりの財津和夫氏で、
松田聖子さんへの楽曲提供はシングルではこれが最後となりました。

編曲はやはり「白いパラソル」以後、久しぶりの大村雅朗氏です。


楽理ノート

全体の構成はシンプルな2コーラスです。
リズムは8ビートで典型的なバラードですが、一聴するとスローなのに
意識して聴いてみると意外に速いテンポであるのに気づきます(125bpmくらい)。


キーは Fメジャー(ヘ長調)で、他調への転調はありません。
松田聖子さんのシングルA面曲は、「風は秋色」「天国のキッス」を除き
ほとんど転調は使われていません。


松田聖子さんの楽曲に限るわけではないのですが、コード進行上の特徴として
V7の和音(ドミナント)がほとんど Ⅱm7/V に置き換わっている事があり、
I に戻りたい進行の時に多くの場合でその前に使われる V7 が鳴っている時、
メロディーの進行上 ド を長めに使いたい時に V7 だと音が半音でぶつかり
不協和音となる(V7 はソ・シ・レ・ファの和音です)ので、
V7 の代用として響きが似ているⅡm7/V が使われる事が多いんです。

松田聖子さんの楽曲では、Ⅱm7/V の持つ曖昧な響きを
「聖子カラー」の一つとして利用しているように、私には感じられます。
(以前にも書いた事ですが、復習って事で(^^;))


イントロはキーボードによるきれいなメロディーで始まります。
よく聞くと意外に複雑な和音が使われている事がわかりますが、
それは 9th が入っているからなんですね(9thとは主音から数えて
9番目の音、即ちドミソに対してレの音の事です)。
その部分での和音の基本的な響きには影響を与えず、
どこかプロっぽい複雑な音にしている…と言ったところでしょうか。
それは ♪くちびるを寄せる少女…♪ に続くギターのオブリガートにも使われています。


Aメロ ♪トゥルリラ トゥルリラ…♪ のコード進行には
F→F/A→B♭→G7/B→C7→C7/B♭→Am7→Dm7…と、
ベース音をメロディーのように上昇させたり下降させたりするクリシェが効果的に使われ、
なめらかな音の動きを意識している事がわかります。

Bメロ ♪あなたしか 見えないの…♪ では F→FM7→Gm7→C7→Gm7/C→FM7…と
メジャーセブンスが程よく使われ、
さらにドラムスを控えめにして哀愁感を演出しています。


聴きどころ

グリコのチョコレート「ポッキー」のCMソングであり、
そのイメージ作りや秋の雰囲気をゆったりとしたバラードで作り出しています。

ただ、シングルA面曲としてはどうもインパクトが弱く、
オリコン1位を3週も続けるヒットとなったのは、CMソングである事と
当時の松田聖子さんの絶大な人気によるものであったと言って良いでしょう。
個人的には、歌詞を含めやや飽和感が漂う、盛り上がりに欠ける楽曲に感じられます。


1982年12月に発売されたセミベストアルバム「金色のリボン」には、
この曲の別アレンジバージョンが収録されていて、
シングルよりも壮大なイメージとなっています。


松田聖子さんが一年間パーソナリティを務めたラジオ番組「ひとつぶの青春」(FM東京)では、
新曲が出るたびにリスナーから送られてきた英訳の歌詞を歌うコーナーが設けられ、
この「野ばらのエチュード」の時も "Tulu-lila Tulu-lila, blowing in the wind,
I'd like to travel to …" と英語の歌詞で歌われましたが、
その歌唱がかなりトホホで(^^;)、
「ひとつぶの青春」の最終回の時にそれがもう一度オンエアされた時、
聖子さんは「よくぞこれをオンエアしたものだ」と自虐的に言っていました(^^;)
今も、それを聴き返すとちょっと笑えます(^^)


楽器と定位

左: アコースティックギター ハープ コンガ 

左―中央: エレキギター 混声コーラス

中央: ドラムス(シンバルは左右一つずつ、タムも一部左右) ベース 
   パーカッション シンセサイザー(SE) 電気ピアノ

中央―右: エレキギター(ディレイ音) 混声コーラス

右: シェイカー コンガ ハープ(ディレイ音)

左右: ピアノ ストリングス

ベース以外、どの楽器にもステレオ効果が感じられる音作りがされていて、
ハープやエレキギターは30ms前後のディレイを通して反対チャンネルに返していますし、
ピアノやストリングスは収録自体がステレオで左右に広げられ、
電気ピアノは薄いコーラス効果で左右に広がっています。

シンセサイザーによるSE(イントロや間奏では鳥の鳴き声のような音、Bメロでは波の音)も
中央に定位しながらも左右への広がりが感じられます。


最後に

先述のようにシングルA面曲としては地味であるように思えるのですが、
松田聖子さんの歌唱に安定感と余裕が感じられるようになり、
その1年前とは別人のようです。
スリルがなくなってきたとも言えますが、その分歌詞の内容がより素直に、
また聖子さん独自の情感表現もより感じられますね(^^)

当時の聖子さんのボーカルを最も生かしていたのはやはり、大村雅朗氏のアレンジ。
私にそう認識させてくれた楽曲でもあります。


「野ばらのエチュード」
作詞 : 松本隆
作曲 : 財津和夫
編曲 : 大村雅朗
レコード会社 : CBSソニー
初発売 : 1982年10月21日

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ソニーのテープデッキカタログ&随想

ごめんなさいm(__)m 今回は楽曲解説のつもりだったのですが、
じっくりと取り組む時間が少なくて完成しませんでしたm(__)m

で、今回は私が子供の頃からずっと好きで、大切にしているカタログの一つをご覧下さい(^^):
sonydecks表.jpg sonydecks裏.jpg

実はワタクシ、メカニズムが大好きで(^^)
子供の頃にオーディオに興味を持ったのは、機械と音楽が密接に結びついている事が
きっと、一番大きな理由だったと思います。

レコードプレーヤーは、レコードを一定の回転数で回し続けるターンテーブルと、
レコードの音溝から音を拾うトーンアーム(ピックアップ)そしてそれらを組み込む
キャビネットで構成されており、単純明快です。


しかしテープを扱う機械、即ちテープレコーダー・テープデッキ・テーププレーヤー
のメカニズムはそうはいきません。

リールに巻かれたテープを引き出し、ヘッドに密着させながら一定速度で走らせ、
そのテープを巻き取る。
高速で早送りしたり、巻き戻したりする機能も必要。

テープをヘッドに密着させつつ始めから終りまで一定速度で安定に走らせる事は
現実には非常に難しいですし、
早送りや巻き戻しからテープをたるませず、また逆に張り過ぎて切ったりしないように
ストップさせる事も非常に難しい等々…
と、高度な設計と調整が求められる事柄だらけなんです。


1970年代には、ソニー、ティアック、アカイの主要3社に加え、
ナショナル(現パナソニック)、パイオニア、サンヨー、シャープ、サンスイなど、
オーディオ製品を扱うメーカーはほぼすべて、自社でテープ関連機器も開発していました
(一部にOEMもありましたが)。

その中でもソニーは、8トラックカートリッジ、ラジオカセットから
ツートラサンパチと呼ばれる高性能オープンリールまで、
テープ機器のラインナップが最も充実していたメーカーであると言えます。

今回は、ソニーが最もテープ関連に力を入れていた時期と思われる1972年当時の、
テープデッキ総合カタログの内容をご覧にいれますね(その表紙・裏表紙が上の画像です)。
どの画像も、上でクリックすると大きな画像が開きます:
sonydacks01.jpg sonydacks02.jpg
sonydacks03.jpg sonydacks04.jpg
sonydacks05.jpg sonydacks06.jpg

最後の2枚は技術解説のページで、専門用語が多いのでわかりにくいかも知れませんが、
当時のソニーが自社の製品開発にいかに自信を持っていたかが率直に表れていて、
ここだけでも読み応えのあるものとなっています。

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実はワタクシ、以前からどうしても気に入らない事があって、
このブログでいつか訴えたいと思っていたんです。


現在では、オープンリールデッキは新製品が出る事は全くなくなりましたが、
カセットデッキはティアック(TEAC)などに細々ながらまだ現行製品があります。

しかしそのどれもが、1970年代~1980年代にオーディオを経験していた者からすると、
信じられないほどの 低性能 なんです。

特に信じられないのが回転ムラの率を示す「ワウ・フラッター」で、
ティアックのカタログを見ると平気で 0.2%(WRMS) などと表示されています。

それは勿論、数値が低いほど良くて、70年代初頭あたりでも
「悪くても 0.15%(RMS)以内」などと言われていました。
そのあたりが、普通の人が例えばピアノが録音されたテープを聴いて
ワウ・フラッターに伴う音の揺れを検知できる最低ラインと言われていたんですね。

それが、40年ほど経った現在では平気で 0.2%(WRMS) なんて書いてある。
しかも(WRMS)とは、(RMS)の規格に聴感補正を加えたものなので、
RMS表示に変換すると0.3%近くにもなってしまうんです。
その値だと、普通の人でもテープを聴いていて時々「あれ?」と検知してしまいます。

特にデジタルオーディオでワウ・フラッターゼロの音源を聴き慣れていると、
わずかな音揺れも余計に耳につくはずです。

それは、CDが登場して以後、オーディオ製品のメカニズムの精度は劣化の一途をたどった、
と言う事。
そう言えばレコードプレーヤーの仕様を見ても平気でそんな値が書いてあるし…。
メカニズムの高性能化は日本のお家芸だったはずなのに、デジタル機器の隆盛により
それが見捨てられた事の表れです。

そんな性能のデッキで「アナログ資産をデジタル化しましょう」とは、失笑ものです。


さらに気に入らないのは、現行のカセットデッキでは、ドルビーはBタイプしか対応していない事。

テープのヒスノイズを低減させる回路として、まずドルビーBタイプ、
ビクター独自のANRS(ほぼドルビーBと同じ)、東芝のADRES、dbx、
再びビクターでSuper ANRS、そしてドルビーC、最後にドルビーS…などが次々に登場し、
方式が違うと互換性が無かったため、最後にはシェアが高かったドルビーB・C・Sが残る
結果となりました。

なので、カセットデッキのユーザーがドルビーCやSをかけて
録音したテープも多数存在するはずで、
それらはそれに対応するデッキがないと正常な音には再生されません。
現在、当時のデッキは経年劣化等で使えなくなっているか、
廃棄されたものがほとんどでしょう。

メーカーがユーザーに、本当に「アナログ資産をデジタル化」させる気があるのなら、
ワウ・フラッターは仕方なく妥協するにしても、ノイズ・リダクションについては
最低でもドルビーCくらいは搭載されているべきなのに、
そのような機種は現在は市販されていません。

本当に、中途半端。

開発予算など、メーカー自身の事情もあるのでしょうが、
そんな中途半端な製品を出すくらいなら、
過去の機種のメンテナンスやリカバリーを実施する方がどれだけユーザーが喜ぶ事でしょう。


日本は、やはり基本はメカニズムとアナログの国だと思うんです。
デジタル機器で海外メーカーの後塵に拝するよりも、
本来の力を発揮できるモノづくりをしてほしい。

様々な機器でデジタル化が進んでいますが、人間が対面する入力と出力は必ずアナログです。
日本の最も得意な技術がそこで生かせるのではないか、
その最も参考になるのがかつてのオーディオ機器ではないか。
勿論、入力から出力まで純粋に精巧なメカニズム+フルアナログで勝負できれば最善ですが。

今はまだ、それらはファンタジーに近いかも知れませんが、
近年ではデジタルデータの脆弱さも徐々に認識されつつあり、
アナログが復権する日が来る可能性も決して低くないと思うんです。
それはオーディオに限らず、ですが。

そんな事を常々考えているぽぽんたです。


次回は必ず楽曲解説に戻ります(^^)/

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大昔の自宅録音、略号SOS

音楽を制作するアマチュアにとって今は本当に良い時代で、
PCを使えば録音トラックは無制限、それもノイズや音質劣化無しで、
その気になればいくらでも音を積み重ねられるし、部分的な修正も、
一通り全部録音し終わってからでもいくらでもできます。
そのためのソフトも無料からあります(実際にはマイクや
オーディオインターフェイスなどが必要になりますが)。

しかし私が自宅録音、いわゆる宅録(そんな言葉が知られるようになったのは
私が大人になってからでした)を始めた小学6年、即ち1973年頃には、
大人がやっと買えるのが4トラック止まりで、8トラックや16トラックなどは
完全にプロだけのものでした。
勿論アナログで、オープンリールだけです。

なので当時、学生や一般人は、自分で音楽制作のために多重録音をするには、
方法は一つしかありませんでした。 それは…

サウンド・オン・サウンド!

私が持っていたデッキも含め、当時市販されていたオープンリールデッキの殆どは、
左チャンネルと右チャンネルそれぞれに録音スイッチがあり、
片チャンネルずつ録音したり再生したり、また片チャンネルで録音しながら
もう片チャンネルを再生する事もできました。
つまりモノのレコーダーが2台入っていると考える事ができるんですね。

そんな構造を利用し、例えばマイクで左チャンネルにギターを録音し、テープを巻き戻し、
録音したばかりのギターを再生しモニターしながら新たにピアノをミックスし、
それを右チャンネルに録音する。 それでめでたく一人二重奏が完成します。

それで足りなければ、今度はその右チャンネルに録音された一人二重奏を再生し
モニターしながら歌をミックス、それを今度は左チャンネルに録音すると
一人二重奏+歌で3役をこなしたものとなるわけです。

それらを繰り返せば、何重にでも音を重ねる事ができます。

そういった操作は、ライン入力とマイク入力を同時にミックスできるデッキならば
新たな録音のたびにデッキの入出力での配線を変えれば可能なのですが、
私が持っていたデッキは入力が一系統だったので、それは不可能でした。

そこに救世主のような製品が登場しました。
ソニーのサウンド・オン・サウンド&エコーアダプター、SB-200です。
SB200-1.jpg

当時のソニーは日本で初めてテープレコーダーを商品化したメーカーとして、
その利用価値を高めたいと言ったようなポリシーが確固であったようで、
テープレコーダー(デッキ)の利用範囲が広がるようなアダプター類を
いくつも市販していました。

SB-200もそんな製品の一つで、私が前年(1972年)の誕生日にデッキを買ってもらってから
間もなく発売され、それを知った私はもう、欲しくてたまりませんでした。
で、小学6年の時、誕生日にプレゼントとして買ってもらう事に成功しました。
今も大切に持っています(^^)
SB200-2.jpg

このアダプターは一度デッキに接続すれば、左→右でも右→左でもスイッチ操作で
自由にサウンド・オン・サウンドができ、さらに3ヘッドデッキの特性を生かした
エコー録音もできる優れものです。

ただ、サウンド・オン・サウンドは新しい音をミックスしながらダビングを重ねる
ようなものなので、重ねる度に最初の方で録音した音がぼやけていきますし、
アンプのノイズやテープ独特のヒスノイズも加算されていきますから、
実用になるのは5~6回(=5~6重)が限度でした。

これを使い、そんな限度など無視して20回くらい自分の声を重ねてみたり、
ギターとリコーダーのアンサンブルを作ったり、
FM放送やレコードの音にダブダブにエコーをつけたり…などなど、
様々な実験をして楽しんでいました。
そんな経験が、ブログで書いているようなサウンド分析などに大いに役立ってます。


当時の音はいくつかテープに残っているので、その中の一つを聴いてみて下さい。

小学6年の音楽の教科書に「キラキラ星」の、リコーダー演奏用のバリエーションが
4パターンほど載っていて、授業でも使われました。

授業ではそれぞれ一つずつ習ったわけですが、ふと「これを全部重ねたら
どうなるんだろう」と思いつき、床を叩く音とギターをガイドに
リコーダーを4本分重ねたのが次の音声です。 小学6年の3学期に作ったものです:

最後近くでヨレヨレな演奏になっていますが、これはアレンジでも演出でもなく、
気が緩んで間違えたのがそのまま残っているだけです(そこが子供なんだよねぇ(>_<))
尚、リバーブは後につけたものです。

演奏は幼いのですが、アイディアはまあまあだし6重録音のわりにノイズが少ないかな、
と(完全自己満足の世界です)。


SB-200の内部は配線と抵抗でできていて、トランジスタやコンデンサなど
劣化する部品は使われていないので、
スイッチや可変抵抗器の内部で接触の問題が無ければいつまでも使えます(^^)

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サウンド・オン・サウンドでは、その時その時での最後の音はやり直しができますが、
それ以前の音は単独にやり直したり、音量やバランス、音色を変えたりなどはできません。

最初に述べたように、今ではPC用ソフトを使う時も、
単独のマルチトラックレコーダーでも、
各楽器音や音声が割り当てられたトラックにそれぞれ単独で入っていれば、
いつでもどこからでも録音し直したり、ミックスでバランスを組み立て直したりなど、
何でもできちゃいます。
なので、ある程度のスキルがあれば誰でも完璧な演奏の音源を作れるわけです。

それは本当に素晴らしい事なのですが、それを「素晴らしい」と思えるのは
サウンド・オン・サウンドを知っているからかも知れません。
今の若い人にとっては、例えばトラック無制限の環境は当たり前ですからね。

しかし、これは以前に書いた事なのですが、今はそういった環境のために表面的な
完璧さばかりを追求し、本来最も大切であるはずの「音楽に魂を込める事」が蔑ろ
(ないがしろ)なっているのでは、と思うんです。

かつての音楽制作は、少ないトラックをどう使うか、やり直しが許されない録音を
どう切り抜けるかなど、常に創意工夫と緊張を伴った作業であったはずで、
そこにそれまでにない音楽性が生まれた作品も数多いと思うんです。
ビートルズの音楽など、まさにそうではないかな。

現在では入れたい音はいくらでも入れられるし、やり直しはいつでもできるし、
演奏は打ち込みでどうにかなるし、下手な歌はいくらでも修正できちゃうし、
どんな効果もソフトで作り出せるし…
と、制作時に創意工夫や緊張を求められる部分がどこにも無いんですね。

しかもそれはアマチュアもプロも同じなので、出来上がった音源を
一般の人が聴いてもアマの作品かプロの作品か判別できない、
そんなレベルになっています。
それが、特に2000年以降にいわゆる「名曲」がなかなか出てこない理由の一つでしょう。
素人でも作れそうな音楽やサウンドでも買いたいと思う人は、そうはいませんからね。

そこで私がいつも考えるのが、ここらでベテランと言われる音楽家達が
お金と知恵を出し合い、プロにしかできない事をどんどんやるべきだ!
と言う事なんです。
そのあたりは機会をみて、持論をいつか書かせて頂きますね。


来週は楽曲解説に戻ります(^^)/

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