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炎 / 西城秀樹

この曲はすごいですよ:

炎ジャケ.jpg

チャートアクション

「炎」は西城秀樹さんの25枚目のシングルとして1978年5月に発売され、
オリコンシングルチャート最高5位(同年6月26日付)、同100位内に15週登場し
25.7万枚の売り上げを記録しました。


作家について

作詞は、西城秀樹さんへのシングルA面曲はこれが9曲目となる阿久悠氏。

作曲は西城秀樹さんの初オリコン首位曲「ちぎれた愛」(1973年)を初めとして
数多くの作品の提供している馬飼野康二氏。
編曲も馬飼野氏が担当しています。


歌詞について

「女性にきりきり舞いさせられる男性」
…と、歌謡曲の一つのパターンである「男に振り回される女」を逆転させた新味の強い歌詞で、
それまで能動的な歌詞を持つ楽曲で突進してきた西城秀樹さんが受動的な立場に回った事で
新境地を打ち出したものと言えます。

ドロドロしたものを感じさせる大人っぽい歌詞ですが、元シブがき隊の薬丸裕英さんは子供の頃、
この曲の歌詞「炎で氷を溶かしてみせる」を「悩みも打ち壊すことができるんだ」と解釈していた
との事で、歌謡曲の歌詞は様々な年代に、誤解や勘違いなどがあったとしても色々な影響を与える
ものだ、と思いました。


楽曲について(1)

個人的な見解ですが、西城秀樹さんの持ち味や歌手としての力を最も引き出したのは
馬飼野康二氏であると、私は思っています。

西城秀樹さんの名刺のような曲「傷だらけのローラ」を作曲した功績も大きいのですが、
その前に「ちぎれた愛」で秀樹さんの声の持つ切なさを存分に生かし切り、
後には「激しい恋」で一度耳にすると忘れないようなフレーズを抜群のリズム感でキメさせたり、
「薔薇の鎖」(鈴木邦彦氏作曲)と同路線の「恋の暴走」ではリラックスした歌い方も…と、
西城秀樹さんから様々な歌声を引き出す事に成功しているんですね。

さらに歌声に注目すると、「ちぎれた愛」で初めて聴かれたつぶし声を配した歌唱法は、
それまでに和田アキ子さん等の例はあったものの、若手の男性歌手では初めてと言って良く、
それは同期の野口五郎さんや郷ひろみさんにもないもので、
「ちぎれた愛」以降、西城秀樹さんの大きな武器になっているように感じられます。


馬飼野康二氏の楽曲の、もう一つ大きな特徴はドラマティックな展開です。
それは先述の「傷だらけのローラ」は言うに及ばず、
同時代の傑作「愛のメモリー」(松崎しげる)などでも発揮され、
それは氏が作曲と同時に編曲も行う事が殆どであるのも大いに関係すると思いますが、
構成が複雑であっても起承転結が明快に感じられる、ストーリー性の高い音作りなんですね。


楽曲について(2)

「炎」の全体の構成は2ハーフで、最後にサビ導入部の ♪ア・ア・ア~…♪ のフレーズを再利用し
後を引く終わり方になっています。

リズムは8ビートのロック、テンポは120bpm前後と特に速くも遅くもないものですが、
編曲に16分音符のフレーズが多用されているためか、アップテンポな印象を受けます。

キーはDマイナー(ニ短調)で、他調に渡る転調はありません。


メロディーの構成、これがこの曲の最大のポイントでしょう。
簡単に言うと、1コーラスあたり、前半と後半が1オクターブ差で明確に分かれているんです。
つまり、♪あなたの体はあまりに冷たい…心のどこかで笑っているのか♪
までが第一部で、そこからいきなり1オクターブ上がって
♪ア・ア・ア 一生一度なら…炎で氷を溶かしてみせる♪ までが第二部…と言った構成なんですね。

コードをチェックすると、その第一部では単純なトライアド(3和音)を中心に進行し、
第二部では7thやMajor7thがまんべんなく挿入されてやや複雑な和音となっているのがわかります。
それも、楽曲全体にストーリー性を持たせるためのテクニックなのでしょう。
そのあたりを次の楽譜で確認してみて下さい:
炎score.jpg
西城秀樹さんの歌唱も、第一部では抑え気味に、第二部では激しくと…とクッキリと変えて、
聴いているとどんどん引き込まれていきます。

♪あなたに出会った不幸を思えば…♪ のフレーズと、
最後の♪炎で氷を溶かしてみせる♪ のフレーズでの声の使い分けも鮮やかで、
西城秀樹さんにしか表現できない世界を構築しています。

歌メロ全体の音域が広く(下のCから上のGまで、1オクターブと5度)、
当時はカラオケが流行し始め、素人が楽に歌える事を前提に作られた楽曲が増えてきていた中で、
プロならではの聴かせる楽曲として誕生した1曲であると言えます。


サウンドについて

全体の傾向としては「ちぎれた愛」を踏襲するものですが、
より激しいロック歌謡となっています。

イントロではピチカート奏法のストリングスとシンセサイザーとの組み合わせが絶妙で、
分散和音を演奏するピアノがそれに続き、それからの展開を期待させるに十分な演出です。
西城秀樹さんの声には、生ピアノの音がよく合いますね。

2回ある間奏ではディストーションのかかったギターが演奏されていますが、
これは秀樹さんと親交のあった芳野藤丸さんによるものでしょう。


付記

私がこの曲について書こうと思ったのは、ちょうど40年前の今の時期に発売された事もありますが、
YouTubeにアップロードされている「夜ヒット」でのこの曲の歌唱シーンが、
あまりにカッコいいからなんです。

検索してもらえばすぐにヒットすると思いますので、ぜひ観て下さい。
完璧な歌唱です。

西城秀樹さんがいかに不世出な歌手であったかと言う事を、
その映像だけでも十分確認できると思います。

本当に、素晴らしい歌手です。


「炎」
作詞 : 阿久悠
作曲 : 馬飼野康二
編曲 : 馬飼野康二
レコード会社 : ビクター(RCAレーベル)
レコード番号 : RVS-1132
初発売 : 1978年5月25日

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