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たんぽぽ / 太田裕美

私のハンドルの反対読みですね。 …え?

たんぽぽ.jpg

チャートアクション

「たんぽぽ」は太田裕美さんの2枚目のシングルとして1975年4月に発売され、
オリコンシングルチャート最高33位、同登場週数14週で6.3万枚の売り上げでした。

太田裕美さんの自著「太田裕美白書」によると、数曲の候補から自ら選んだものだったそうです。
デビュー曲「雨だれ」がオリコン最高14位で18.1万枚の売り上げでしたが、
「たんぽぽ」「夕焼け」と同じような成績が続き、制作スタッフは焦ったようです。
しかし太田裕美さんのピアノ弾き語りのイメージを固める上で「たんぽぽ」は重要な作品だったと言えそうです。


作家について

作詞:松本隆氏、作曲:筒美京平氏、編曲:萩田光雄氏と、
太田裕美さんの初期の楽曲の殆どを作り出したコンビネーションによる作品です。


楽曲について

一聴してデビュー曲「雨だれ」の二番煎じと言われても仕方ない仕上がりであり、
「雨だれ」も大ヒットではなかった故に売り上げが伸びなかったものと思われるのですが、
当然ながら「雨だれ」との相違点もいくつか見受けられます。

曲の構成としては2コーラス+最後のフレーズの繰り返しとなっており、
各コーラスは分けるとAメロ・Bメロとなっています。
「雨だれ」では全篇に渡り3連符で作られていましたが、
Aメロはリズムは8ビートながら16分音符でたたみ掛け、
Bメロは「雨だれ」のような3連符攻勢で迫って来る、
いわば2部構成となっています。

3連メロディーは間奏まで続いていて、
間奏が終わる時から8ビートで16分音符主導のメロディーに戻ります。
それまで3連でグングン押していたのがふと緩む感覚が何とも不思議に感じられますね。
尚、間奏はイントロのメロディーを3連に変換したバリエーションとなっています。


このように各コーラス後半に3連メロディーが採り入れられている楽曲は、
他に1973年秋に発売され大ヒットとなった「あなた」(小坂明子)が有名ですが、
「たんぽぽ」の場合は、終始3連メロの「雨だれ」がスマッシュヒットしたために、
新曲にも「雨だれ」のイメージを採り入れようとしたための構成と考えられます。
そこに「あなた」の影響があったかどうかは定かではありませんが…。


「雨だれ」ではオケの主役はピアノで、イントロ・間奏・コーダ、
さらには歌に絡む重要なオブリガートのすべてを受け持っていましたが、
「たんぽぽ」では主役はストリングスに移り、ピアノはAメロで顔を出すオブリガート以外は
バックでオケを支える役目に回っています。


キーはDmで、他調に渡る転調はありません。
歌メロの音域は、「雨だれ」が下のAから上のDまでの1オクターブと4度でしたが、
「たんぽぽ」では下のAから上のEまでの1オクターブと5度と少しですが広がり、
その広がった分、声に切なさがより一層感じられる歌唱を聴く事ができます。


アレンジとサウンドについて

先日放映されたBSプレミアム「名盤ドキュメント」の中で、作・編曲家の萩田光雄氏が
筒美京平氏から依頼された太田裕美さんの楽曲のアレンジにあたり
「歌謡曲でもクラシックの手法でアレンジしてもいいんだ、と開眼した」
との主旨の発言をしていましたが、
「たんぽぽ」ではそれが具現化しているような作りに感じられます。

それを示す要素の一つは羽田健太郎氏によるピアノの、細かい動きなのに
所々、特にイントロでソロ演奏のような溜めと余裕が感じられるフレーズ。

もう一つはベース音の動きを重視し分数コードだらけと言って良いコード進行です。
イントロでピアノソロに続きストリングスのメロディーとなりますが、
素直に書くと Dm・A7・Dm・D7・Gm・E7・A7・Dm であるものが、
実際には Dm・A7/E・A7-9/E・Dm/F・D7/F#・Gm・E7/G#・A7sus4・A7・Dm
で演奏されています。

そこのベース音だけに注目すると D→E→F→F#→G→G#→A と、全音・半音で
1ステップずつ上昇するクリシェとなっていて、クラシック音楽の時代から
常套的に使われていた手法の一つです。

それは歌メロに入ってからも続いていて、Aメロでのコード進行は
Dm・A7/C#・Dm D7/F#・Gm・C7・F・B♭・A7sus4・A7 となっていて、
前半では動きの幅を抑えたベース音が用いられています。
その後、ベース音が G→C→F→B♭ の動き出すと、それまで動きが少なかった分、
まるで(この曲でのサビである)Bメロに向かって助走を始めているような効果を
感じさせる事となるわけです。
ベースの動きに大きな表現力を持たせる事はロックやポップスでも行われていますが、
そのヒントはやはりクラシック音楽であったものと思います。

メロ譜を作成してみましたので、参考までに(サムネイル上をクリックして下さい):
たんぽぽscore.jpg

使われている楽器はストリングス(チェロ、ビオラ、第1・第2バイオリン)、
ホーンセクション(トロンボーン、トランペット)、そしてピアノ。
リズムセクションとしてドラムス、エレキベース、エレキギターと言った構成で、
シンセサイザーなどの特殊な音を感じさせるものが全く入っておらず、
エレキギターもコードのカッティングをしているだけ、
エレキベースもベース音をキープしているだけ(Bメロでは動きがありますが)で、
全体にストリングスとホーン主体の所謂オーケストラサウンドとなっています。
堅実なサウンドですが、ポップスとしては面白みに欠けるのも確かで、
その事もヒットに至らなかった理由でしょう。

「たんぽぽ」の発売と同じ日に「想い出通り」(南沙織)が発売されましたが、
そちらも同じ作曲:筒美京平、編曲:萩田光雄 のコンビの作でありながら、
シンセサイザーやサックス等でオケ自体が明るくカラフルに作られているのに対し、
「たんぽぽ」は重く、モノクローム的なサウンド作りに感じられます。

しかしそれは何よりも太田裕美さんの声と歌唱の良さを前面に出して大衆に知らしめる
目的とも考えられ、次の「夕焼け」ともにヒットには至らなかったもののその目的は
十分果たされ、大衆に太田裕美さんの存在が認知されたからこそ、
「木綿のハンカチーフ」のヒットにもつながったのでしょう。


付記

先日(4月26日)、BSプレミアム「名盤ドキュメント」で太田裕美さんの3枚目のアルバム、
「心が風邪をひいた日」が特集されました。

今回はサウンドの話と歌詞の話の比重が同等くらいで、やはり「木綿のハンカチーフ」
について多くの時間が割かれたため、例えば「かなしみ葉書」や「銀河急行に乗って」
などについては全く触れられず、私としては正直なところ大いに食い足りなかったのですが、
それでもマルチトラックからでしか聴けない音声もいくつか聴けて、それは興味深いものでした。

中でも「七つの願いごと」では、作曲と編曲を担当した萩田光雄氏がクローズアップされ、
そのマルチ音源を使った解説もあったのは収穫でした。
この曲、LPではA面の最後の収録されているのですが、ピアノとボーカルだけでつつましく始まり、
進行するうちに徐々に楽器が増えて最後に大盛り上がりとなる「ボレロ」のような曲で、
レコードだと音質的に最も不利な部分にカッティングされていたんですね(レコードは、
内周に行くほど線速度が遅くなるために音質が悪く、また歪みやすくなるんです)。
私はそれでもその曲が好きだったので、「心が…」がCDになった時にはそれは喜んだものです。

番組を通して私が嬉しかったのは、萩田光雄氏が元気そうだった事です(^^)
昔のように生の楽器で音楽を作りたいと言う気持ちがとても伝わってきました。


「たんぽぽ」
作詞 : 松本隆
作曲 : 筒美京平
編曲 : 萩田光雄
レコード会社 : CBSソニー
レコード番号 : SOLB230
初発売 : 1975年4月21日

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