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「音職人・行方洋一の仕事」&お知らせ

先日、レコーディングエンジニアの行方洋一氏の著書「音職人・行方洋一の仕事」
が発売されました。

小学生の頃から「雨の御堂筋」(欧陽菲菲)、「終着駅」(奥村チヨ)等々、
東芝レコードの、どこかトリッキーで派手な音がとにかく好きで、
中学生の時に「サウンドインナウ」でそれらを録音したのが
行方洋一なる人物であった事を知ってから氏の大ファンだった私にとって、
大げさでなく数十年もの間、待ち望んでいた一冊でした。

実は(と言ってもすでにコメント欄には書きましたが)、
2ヶ月ほど前に行方氏その人と直接お会いし、3時間余りにわたって
お話をさせて頂く機会を持ちました。

少し前に大病をされたとの事だったのですが、そのような事は全く感じさせないほどお元気で、
多くの経験と余裕のある心を持つ御仁ならではと思われる品の良さが印象的でした。
話し方は穏やかなのですが、ノッてくるとややべらんめぇ口調になって、
一人称がいつしか「俺」に…と、
東京出身の私にはとても親しみの持てる方でした(氏は茨城県出身ですが)。
業界の人も会う事が難しいと言われている方だそうで、
そのような方が私のような者に時間を割いて下さった事に心から感謝したいと思います。


で…、その本に書かれている内容の半分以上はその時、ご本人からお話頂いてました(^^ゞ
それが後に本に載る事になるとは思っていなかったので、良かったのか悪かったのか…。
いくつか、その内容について補足解説しますね。
より理解して頂くためには「音職人…」(以後「本」とします)を読んで頂くのが良いかと(^^)


私が特に驚いたのが「雨の御堂筋」の一件でした。
テープ速度が19cm/sで録音されたカラオケを使った音源を商品化しちゃった…との事で、
通常は38cm/sや76cm/sしか使わないプロのレコーディングでは異例中の異例でしょう
(アナログ録音ではテープ速度が速いほど、特に高音域については音質が良くなります)。
しかもそれがオリコン首位を9週も続ける大ヒットになったわけで(^^)


渚ゆう子さんの「さいはて慕情」についての話をされた時には大笑いしてしまいました。
ご自分がSLの録音に行きたいから歌手に上申させるなんて、
なるほど「東芝の不良社員」の面目躍如ですね、と(^^)
行方氏がSLの録音をよく行っていたのは知っていたので、「さいはて慕情」のエンディングの
あのSLの音はそれまで録り貯めてあった音源の一部なのだろう、と思っていたのですが、
「さいはて慕情」のための録り下ろしだったとはその時、初めて知りました。

「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)の録音に行方氏が依頼されたのは、
筒美京平氏が「派手な音」を望んだからと言われていますが…との問いには
「そう!」
実際には、太田裕美さんに関してはデビューから渡米前まで、すべて行方氏が録音していたんですね。


「涙の太陽」(安西マリア)のオケを聴くと、
トランペットにフェイズ変調がかけられてザワーッとした音になっていますが、
それはそれ用の単独エフェクター(フェイズシフター)を用いたのではなく、
何とテープレコーダー4台(しかもそのうち2台は全く同一機種でなければならない)を使って
作られたそうです。
その方法については、1975年夏に発売された季刊テープサウンド特別増刊「Recording '75 」
に記事がありますので、そのページをどうぞ:
blg01.jpgblg02.jpg
(画像上クリックで大きく見られます)

また、本には書かれていない事なのですが、
「涙の太陽」(安西マリア)のボーカルにかけられた二重唱風のディレイについてです。
当時、アメリカではすでにイーブンタイド社のデジタルディレイがありましたし、
日本国内にもエンドレステープを用いたエコーマシンは存在していたので、
そのどちらかを使って効果を出していたものと思っていたのですが、行方氏に伺うと
「いやいや、あれはテレコで遅らせたの」との事でした。
なるほど、だから「サウンドインナウ」でゲスト出演した際、
複雑な配線や微妙な調整が必要なその方法について「(歌と演奏の)同時録音だったら
そんなバカな事できない」と話していたわけですね。
(「サウンドインナウ」ゲスト出演については次の記事を参照して下さい)
https://orikarapoponta.blog.so-net.ne.jp/2013-07-13

そのようにあれこれ工夫が必要だったのは、安西マリアさんのボーカルがひどかったから…
と、本にもハッキリ書かれています(^^;)


行方氏が最も柔和に、慈しむような表情で話して下さったのは、坂本九さんについてでした。
本にはそのレコーディング時のマイキング(マイクロホンのセッティング)について
詳しく書かれていますが、それが成功し、坂本九さんがそれまでコンプレックスだった
低音域に自信を持った事を、行方氏は「自分にとって誇りだ」と仰ってました。
ただ「『上を向いて歩こう』は俺じゃないんだよね」と、それは少し残念そうでした。


1973年にウィスキーのCM音楽の録音でサミー・デイビスJr.を訪ねてロサンゼルスに行った
時のエピソードを話して下さった時は、行方氏はそれは楽しそうでした。
本の中でも触れられていますが、まだマイケルやジャネットが子供だった頃の
ジャクソン5のステージを至近距離のど真ん中で観る事ができたのは
日本人では自分達だけじゃないか、との事でしたが、恐らくその通りでしょう。


さて、これも本には書かれていない事ですが、大変残念な事があります。
何年前かはわからないのですが(行方氏から聞いたかも知れないのですが、失念しました)、
東芝音工、東芝EMIで制作された楽曲について、オリジナルカラオケのマスターテープは
大方廃棄処分にされてしまったそうです。
行方氏は事後にそれを知らされ倉庫に行くと、カラオケのマスターテープが並んでいた棚は
空っぽになっていた…と残念そうに話していました。
なので今後、70年代(80年代以降はわかりませんが)あたりまでの東芝の楽曲は、
そのオリジナルカラオケがCD等で聴ける可能性は限りなくゼロに等しくなってしまいました。
音楽ファン、とりわけオリカラファンにとって、これ以上残念な事はありませんね。

うんと過去には東芝からもオリジナルカラオケが収録されたレコードは発売されていましたし、
廃棄された時にもしかすると関わった人が「捨ててしまうのなら…」と持って帰って
保存しているテープも存在する可能性はあるのでしょうが…いずれにしろ、商品化は無理かな。


他にも色々と興味深いお話を伺ったのですが、
それはまた、機会があればと言う事で(^^)

「音職人・行方洋一の仕事」は、60年代・70年代の歌謡曲が好き!というファンの方々に、
隅から隅まで参考になる記事で埋め尽くされた一冊としてお薦めします(^^)

個人的な事ですが…行方氏に「スマホ、面白いよ」とお勧めされたのですが、
まだガラケーのままです(>_<)

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ここでお知らせです。

このブログ、しばらくお休みします。
今のところ8月いっぱいと考えていますが、もう少し延びるかも知れません。

休止している間も過去記事へのコメントを受け付けています。
お返事も書きますので、よかったら書き込んで下さい。

それでは皆さま、楽しい夏をお過ごし下さい。
くれぐれも熱中症には気をつけてね(^^)/

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